2016年11月 北海道開拓使

 久しぶりに北海道の大地を踏んだ。某学会の「北海道例会」で、「北海道の動物、自然、人」というテーマであった。11月初旬の降雪で、飛行機は、羽田に戻るか函館空港へ行くことを条件に飛び立った。(我々の次の便は欠航に。)無事に到着し、予定通り北海道大学キャンパスへ。例会後は、「札幌農学校第2農場」(北海道畜産発祥の地)内を見学。二日目には、朝からの降雪で、あっという間に15センチくらい積もり普通の革靴では歩きづらかった。約140年前に、北海道開拓使により設立されたという「札幌博物場」(北海道大学総合博物館と北海道大学植物園)を案内いただいた。

 開拓使の歴史は、1869年に北海道開拓を目的に設置されたことにさかのぼる。

 新田開発&牧畜の導入を進める過程で、自然環境が改変し、従来から生息していた蝦夷シカ、イノシシ、オオカミ、ヒグマなどによる被害が増加した。これを食い止めようとした狩猟の記録が多く残されている。その対策に「有害鳥獣獲殺手当」(駆除報奨金制度)が導入された。しかし、この制度は、先住していたアイヌ族の生活習慣に大きな変化を与えた。従来、オオカミの狩猟を主に行っていなかったアイヌ族。ところがオオカミ狩猟全体の70%近くをアイヌ族が行ったという歴史的記録があった。

 植物園内のある所蔵庫を特別に見せてもらい、貴重な鳥獣コレクション(水牛、シマウマ、アザラシ、エゾジカ、カラスなど)を拝見した。中には、150年近く前のTWブラキストン氏(博物学者等)が採取したものなど価値の高いコレクションもあった。特別に、剥製に触れるという貴重な機会をいただいた。

 総合博物館では、250万点の昆虫をコレクションしている所蔵庫へ。専任されている職員は、何と一人のみと。一般公開されている館内では、マンモスの剥製始め、動植物のコレクション、医学、海洋開発、宇宙開発など、幅広い分野の展示がされていた。しかし冷静に考えれば、それぞれの分野はすべて繋がり、共存し、一つの世界にあるわけで、学問というくくりで分断されてしまっているという現実を改めて気づかされた。多くのコレクションの中、ユニークであったのは、展示コーナーから外れた廊下の壁面に貼られた新聞である。これは多くのコレクションを包んでいた新聞紙。歴史を物語る新聞、例えば、満州国で発行された新聞などが、張り出されており、その歴史を垣間見る貴重な記録として管理されていた。

 歴史的に&学術的に貴重なコレクションが、国の施設や研究機関などで管理&保存されている。昆虫、動物、鳥類、魚類などの生き物の剥製や骨格標本に始まり、土壌&化石などから、その中に含まれる数千年前の水や空気までを大切に保管している。将来、科学技術がより発展し、それを解凍し、解明するといった研究を継続する努力に感動する。彼らのルーツは、子どもの頃からの昆虫採集、川遊び、そんな想い出の延長線上にあるのではないであろうか?彼らの活躍が、日本のさらには、世界の自然科学の研究につながっていると考えると感慨深い。

 10年近く前に、ワシントンDCのスミソニアン博物館を見学した。広大な敷地の中、自然史、航空宇宙、アメリカ歴史、アフリカ、アメリカ・インディアン、美術館、動植物園など19の博物館&研究センターがある。滞在時間もなく、2-3の博物館を走り通り抜けるように見てきた。莫大な私財の寄付により、この人類の財産、コレクション、研究材料が収集&分析され、保管、展示されている。なんと素晴らしいことであろうか!

 普段、自分が生きている自然環境のことは、当たり前すぎて、気に留めて、立ち止まって見てみることはほとんどない。季節の変わり目の紅葉には目を止めるが、落ち葉の下にいる今週&微生物まで覗きみることは皆無である。専門外の自分には何もできないが、土壌、昆虫、動植物などなど、少しでも、普段目にできる部分だけでも関心を寄せていきたいと改めて感じた。皆さんもこの季節の変わり目、葉っぱの裏でもちらっとのぞいてみませんか?

平成28年11月吉日
悟空の里主人 金森 悟

●2016年10月 少子高齢化のゆくえ
●2016年09月 都内観光
●2016年08月 携帯アプリ
●2016年07月 おふくろの味
●2016年06月 青少年育成
●2016年05月 出雲大社
●2016年04月 大震災に際して