2016年07月 おふくろの味

 昔からよく言われている「おふくろの味」とは、なんであったか? 日本では古くから家庭では母親が料理をすることが一般的とされてきた。いわゆる家庭の味というのは、「おふくろ」が作ってくれた料理のことである。それでは一般的に、どのようなメニューが該当するのか? ネットで調べてみると

【煮物】「切り干し大根の煮物」、「炊き込みごはん&混ぜごはん」「肉じゃが」「里芋の煮っ転がし」、「茄子の煮物」、「かぼちゃの煮物」、「厚揚げの煮物」、「ひじきの煮物」、「魚の煮つけ」
【焼き物】「厚焼き玉子」、「卵焼き」、「餃子」、「きんぴら」
【揚げ物】「コロッケ」
【その他】「カレーライス」  
など。自分でも記憶に残る母親が作った、または、台所でお手伝いをしたメニューも思い出す。
 我が家のことを思い返すと、父の実家が富山で農家をしていたので、お米は必ず、実家より送られてきた。また味噌は、両親が他界するまでは、富山の赤みそを取り寄せていた。(ちなみに妻は、長野県出身であったので、信州味噌であった。)小学校の頃、学校の旅行先で、お味噌汁が出ると、味が違ったり、色が白かったりと、違いを知るようになったのもこの頃であった。また学校&ボーイスカウトで出かけるときの「おにぎり」は、富山の「とろろ昆布」にまぶされたものであった。海苔のまかれたおにぎりはとっても物珍しく感じたのは、かなり後からであった。子供心に、お手伝いの記憶は、餃子の肉詰め、ハンバーグの挽肉とパン粉をボールの中で混ぜるなど、何度もやったことが懐かしい。

 海外では、ソウルフード、郷土料理、国民食といわれる。先日、フランス・ニーズ在住のフランス料理の松嶋啓介シェフに教えてもらった、フランス南部プロヴァンス地方「ニース」の野菜煮込み料理「ラタトゥイユ」がある。材料は、玉ねぎ、ピーマン、ズッキーニなどの夏野菜をニンニクとオリーブオイルで炒め、トマトを加えて、バジル、タイムなどの香草で煮る。日本でもよく知られるメニューのようであるが、プロヴァンス地方で採れない野菜が入ったり、オリーブオイルを使わなかったりすると、それは「ニース風」であり、本来のものとは違う。なんてお話も。

 我々の日常生活、食生活は、コンビニ、スーパーでの買い物が一般的となり、気軽にインスタント食品、冷凍食品、レトルト食品が、家庭の食卓に浸透してきている。その地域に採れた食材、調味料で作る、その地ならではの料理は、すっかり影が薄らいでしまったのではないか。ところが、昨今の動きとしては、核家族化、少子高齢化、一人暮らし老人などが増え、「おふくろの味」への原点回帰ともいわれる動きが出てきているという。惣菜、コンビニ弁当、宅配弁当も「おふくろの味」風のメニューを取りそろえるようになったという。思い返せば、亡くなった両親が、宅配弁当を取り寄せていたが、煮物、揚げ物が多く、大量生産されている弁当は、両親にとっては、味付けなどに不満で、まずご飯は、自分で炊いたお米。おかずもスーパーへ買い物に出かけて、おふくろの味風惣菜を買ったり、自宅で煮物をしたりと、満足できる食事をしようとする活力を持っていた気がする。

 先に出てきた松嶋啓介シェフの言葉に『人を良くすると書いて「食」。人を良くする事と書いて「食事」』というメッセージがある。「おふくろの味」は、子育て、人間形成、家庭を良くするために必要不可欠なものであり、それは、社会を国を世界を良くしていく原点でないかと。料理を作るということを、改めて考え直して、手間暇はかかるが、食材の良さを引き出して、おいしい料理を作る大切さを痛感した。(松嶋啓介シェフは、お店の経営も同じで、手間暇かけながら職人を育てることで、素晴らしい料理人が育ってゆく。)とも教えてくれた。家庭での子育てもしかり。

 「おふくろの味」、家庭料理を思い返すことで、また新たしい発見をさせていただいた。皆さんも自分が育ってきた家庭での味、現在子育てをしながら、作っている味、大切にしてゆきましょう!!

平成287月吉日

悟空の里主人 金森 悟

 

●2016年06月 青少年育成
●2016年05月 出雲大社
●2016年04月 大震災に際して
●2016年03月 タクシー
●2016年02月 死ぬまでに観たい映画
●2016年01月 買い物
●2015年12月 おせち料理