2009年06月 端を知る
先日ある学会に参加して、多分野の先生方の物事の考え方に関する話を聞いた。
最近の学生たちは、安全志向で、失敗のない中庸の判断をすることが多い。従って、決められたことへの対応には従順であるが、いざ環境状況&条件が変わったときに、気づき、対応することが遅い。との指摘をされていた。たとえば、「植物を育てる。」ことについて、従来の経験値は、土の上で育成したベースのものである。ところが、ビルの屋上で、同じように育成しようとした場合、夏の炎天下、表面温度が60℃近くにもなるコンクリートの屋上の上の鉢と、土の上(せいぜい30℃台?)での育成の条件の違いをすぐに理解できない。このようなケースからも、発想の乏しさ、幅の狭さを指摘された。この例を発端として、普段おこなう想定を超えて、極端な発想、最良&最悪のケースなど、「端」となるようなケースを想定することなく、中庸のことばかり考えていると、想定外の状況対応ができなくなってしまう。また両極端の発想に乏しいと、従来の考え方を超越して、新しい発想、独創が生まれてくる余地はないという。物事によっては、両極端の幅が違うというもの興味深く、日頃の物事の考え方・心構えなど、自分の発想&行動を思い返すよい機会となった。
さて自分の生活の中での例を探してみた。言葉を変えると「想定外」のことが起きたときの対応。または、「想定外」すら考えることがない状況と表現できるのでは無いであろうか? 自分の行動パターンを振り返ってみると、日頃、「想定外」であろう極端な事象を想定して心がけをしていることがある。そのルーツは、6歳過ぎたころからかかわってきたボーイスカウトの活動にある。活動のモットー(規範)に「そなえよつねに」(備えよ常に:Be Prepared)というものがあり、「いつなん時、いかなる場所で、いかなることが起こった場合でも、善処が出来るように、常に準備を怠るなかれ」という意味で、子供のころからそんな習慣の中育ってきた。安全&平和な世の中では、だんだん衰えてゆく思考であろうか・・・。普段のことでは、携帯の電池がなくなったときに、充電できないことを想定して、スペアの電池を持ち歩く。緊急情報を得るために、FMラジオ、お菓子などの緊急食料、小型ライトなどを携帯する。名刺入れの中には、電車内で、気持ち悪くなった人がいた場合を想定してエチケット袋(ビニール袋)。また、小さな怪我を想定してバンドエイドが入っている。災害時の避難を想定して、社内でサンダル履きはしない。小銭入れの中&免許証入れの中に、千円札を一枚小さく折って入れておく。現在、すべてを実践しているわけではないが、常に突発的に起こるかもしれないことを想定している。
さらには、前職時代の香港出張の際に、前日からの大雨による道路冠水から大渋滞。乗った車が、予定していた飛行機に間に合わない。という事態になった。当時携帯電話はなく、サービスエリアの(どこにサービスエリアがあるか覚えておく。)公衆電話に飛び込み、常備していたフライトスケジュール表を見ながら、次の便への変更予約をし、すぐに会社へ向かい。現地でのスケジュール再調整。別の日には、ミラノからジュネーブ経由ロンドンへ移動した際、ジュネーブでの打ち合わせの数時間の間、荷物は、スルーで預かってもらった。仕事を終え飛び立つ直前、ふっと窓から荷物を積み終えた作業員たちの車にポツンと残るスーツケースが目に入った。そこには、私と同じ派手な蛍光色オレンジのバンドが巻かれていた。まさかと思いながら乗務員にその旨伝え、タラップを降り、滑走路を走り、作業員たちの下へ。なんと私の荷物!!無事にピックアップしロンドンへ。そんな経験から、スーツケースのド派手なバンドは、私の必須アイテムとなった。
世の中、何が起こるかわからない。しかし、何の根拠も無く、自分には起こらないであろう。と変な自信を持った人も多い。パンデミックが宣言され、新型インフルエンザの脅威もある中、意外と何もしない人が多いのも現実である。過剰な反応・行動は必要ないと思う。しかし、普段の生活、行動の中で、「困った!」、「こうしておけばよかった!!」と感じたことがひとつでもあったのではないであろうか?そのひとつでも、再度遭遇したときには、困らない心の、物の準備をしてみてはいかがであろうか?極端に考えれば、何が起こって何をしたら良いのか??「端を知る」ことで、発想&行動が、前向きになってきたら楽しいのではないであろうか!! 今からでも始められますよ!!
平成21年6月吉日
悟空の里主人 金森 悟
●2009年5月 次への力 ●2009年4月 引き合わせ
●2009年3月 奇跡の出会い ●2009年2月 正しいものの見方とは?
●2009.1 気づいていない自分を探して! ●2008.12 会いに赴く