2015年03月 現在と時代の差異

 先日、ある学会の例会に参加した。テーマは「サクラをもっと知ろう」。

 一般的に、日本で桜といえば「ソメイヨシノ」。実は、ソメイヨシノの由来は、江戸の染井村(現在の駒込)で、藤野寄命氏が上野公園にて山桜とは違う種の桜をみつけ、奈良県「吉野山」に多い山桜との混同を避けるため、「染井吉野」と、明治24年(1891年)頃に命名。明治33年(1990年)、世に発表されたと。

 それでは、日本の歴史の中、万葉集、古今和歌集、源氏物語、枕草子などに登場してきた桜は、現在、よく目にする「ソメイヨシノではない。」ということになる。そこで思ったことが、テレビドラマなどで、武家屋敷内、川沿いに映る桜のシーンは、何サクラであっただろうか?何気なく見過ごしている時代背景と現実との差異に気付かず、見過ごしてしまっている描写に興味がわいてくる。

 同様に、以前に馬の専門家、鶏の専門家の方の話を聞いた際にも似たような話を思い出した。

 昨年、NHKの「坂の上の雲」というドラマがあった。登場人物の一人は阿部寛(189センチの長身)が、陸軍軍人、陸軍騎兵学校校長などを歴任し、「日本騎兵の父」と言われた役柄で、さっそうとサラブレッド馬にまたがるシーンを覚えている。この明治時代半ばには、既にサラブレッドが、海外から輸入されていたようであるが、陸軍ではサイズの小さい日本の馬が多く使われていたと思われる。実際そのサイズの馬を使った撮影では、阿部寛がまたがると足が地面についてしまうという理由で、背の高いサラブレッドを使用し、それに合わせた馬具もしつらえる工夫があったと聞く。他にも歴史で語られる馬を使った武士の活躍は、その当時の馬&日本人のサイズでは、不可能と思われるが、史実として語り継がれているとのコメントを聞く。

 さらには、NHKの「龍馬伝」に登場した坂本家、岩崎家の庭先での鶏。時代背景からすれば、地鶏であるはずが、プロの目から見ると、当時では日本に持ち込まれていないヨーロッパからの種が庭を駆け回っていたシーンがあったようだ。

 番組作成には、時代背景を研究されたプロが、衣装、建物、内装、大道具&小道具、動植物、言葉遣いなど、かなり当時に近いものを再現していることは、承知している。素人の目では、絶対に見過ごしてしまうことが、プロの目から見ると、やはり違和感があるという後日談は、我々にとっても興味深く、その時代の背景を学ぶきっかけになる。日頃目にしているものには、それぞれの背景&歴史があり、それが日本古来のものではなく、外来のものであることが多い。ひとつのことでも、時代背景の違い、日本で使われ、日常化した経過などを知りながら使うことで、楽しみも増えるのではないだろうか。今からら50年、100年が経過して、昭和の時代のドラマが作られたとき、今現在使っているファッション、若者言葉、食べ物、生活グッズ、パソコン、携帯電話など忠実に表現されるのであろうか? その時代に見たら、「当時はそんなもの使ってなかったよ!!」なんてコメントしてみたいものである。

 以前、50歳になった時に、「寿命100年」と位置づけ、今年は、折り返し地点を過ぎて7年目を迎える。今まで、歴史的に忘れられないのは、幼稚園時代の「東京オリンピック(1964年)」。ブルーインパルスによる五輪の雲。フランクフルト(西ドイツ)滞在時の「ドイツ統一(1990年)」、「湾岸戦争(1990年-1991年)」。帰国して、「阪神・淡路大震災(1995年)」。芦屋市芦屋公園にテントを張り、救援物資の搬送作業の手伝い。「アメリカ同時多発テロ(2001年)」。(1989年頃、仕事で最上階レストランでの会食の思い出。)「東日本大震災(2011年)」。岩手県大槌町を訪問し、地元の方々との交流&支援。「長野の御嶽山噴火(2014年)」。現地災害対策本部への激励。今年3月14日の「北陸新幹線開通」。生まれ故郷へのアクセスの短縮。将来へ向けては、先日、国立競技場の解体作業が始まり、「2020年東京オリンピック開催」へ向けての準備がスタート。ほんのわずかな期間の中でも、歴史は大きく動き、物事がどんどん変わってきている。時代の流れ、現在に至るまでの経過、経緯など、記録に残し、また振り返ることは、ますます重要になってくるに違いないと思う。みなさんも目も前の物事&事象で満足せずに、その背景を学んでみませんか?

平成26年3月吉日
悟空の里主人 金森 悟

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