2013年03月 訪問地でのひととき

 この一カ月、最近では珍しく、公私、あちこちを飛び回った。福岡、熊本、島原、那覇、上諏訪、六日町。30年ぶりの地もあれば、1年ぶりの地も。いずれも地も人とのご縁に始まり、いろいろな展開をしていく過程であり、延長線上にある。
振り返れば、前職で、約10年間、毎月海外出張していたころを思い出す。当時に比べれば、年齢も違い、仕事も違うので、比較にはならないが、唯一共通した点がある。わずかな時間でも、人とのご縁を大切にしたいと思う気持ちが強く、「わずかな時間でも人に会いたい。」と考え行動することである。
 かれこれ25年前、年に5-6回のヨーロッパ出張では、ドイツ、フランス、スイス、イタリア、スペイン、イギリス、ベルギーなどを訪問。各地に赴任している友人知人の連絡先をあらかじめ調べておく。当時は、メールがないので、電話が中心であったが、まずスタートの地から連絡を入れ、会う仮約束をする。仕事、飛行機のスケジュール変更などで、実現しないこともあったが、出張の楽しみでもあった。ある友人は、私が、ミラノからジュネーブ経由、ロンドンへの移動の予定の連絡を入れておいた。ジュネーブでのGATTの会議の休憩時間に抜け出して、レマン湖のほとりでお茶につきあってくれた。それ以外にも、イギリスでは、留学中の寮で飲みあかし、泊めてもらったことも。アメリカ出張の際には、ワシントンで、G8の会議の合間を縫って、食事につきあってくれた友人も。ニューヨークでは、10年以上音信不通だった前職のニュージャージー在住のアメリカ人の部下をインターネットで探し、再会することもできた。ホノルル集合の予定があったが、一行よりひと足早く出て、ハワイ島に寄り、新婚旅行でお世話になった日系人夫妻に約20年ぶりの再会をし、夜にはホノルルへ。国内でも、神戸前泊入り予定の出張に、午前の飛行機で、福岡まで飛び、中国領事館赴任中の中国の友人とランチ。その後も、前職友人とお茶をして、新幹線で神戸へ向かった。いずれにしても若かったからできた、ちょっと無謀とも思う行動であったと思う。ただ、とっても充実していたともいえる。
 今回は、東京でのご縁がきっかけとなり、島原で仕事があった。30年前は、熊本から長崎へ移動する通過点であったので詳しい記憶はないが、当時と大きく違うところは、雲仙賢岳噴火の前と後であったということである。あわただしく滞在して、観光をする時間も十分にとれなかったことは残念であったが、記憶にしっかりと残るひと時を過ごすことができたことを感謝している。その帰り道、福岡に泊まり、前職を早々に退職した同期二人と、福岡赴任中のひとりと三人で飲んだ。ひとりは約25年ぶり。
人がいるからその地へ出向く。出向いた土地で人に会う。昔も今も、出張は、ほとんどが一人旅である。元々ひとりで食事をするのが苦手な私は、色々理由を探して、人に連絡し、ひと時を過ごす。そんなひとつひとつの思い出は今でも、国名、地名、地図をみると当時の様子が甦るのは不思議でもある。
 年齢とともに、動き回るのが面倒になることもあるだろう。ただ、動き回ることで、人とのご縁が続き、再開し、見直され、広がり、素敵なことがたくさん待っているような気がする。また人に会いに行くことにより、未踏の地、何十年ぶりの地など、懐かしい、新しい経験もできる。出かけること、人に会うことの大切さ、楽しさ、夢が広がる様子を思い描けることができることは素晴しいと感じた。
 梅の花もきれいに咲き、春風に乗って、友人を訪ねて、出かけてみませんか? 距離は気にせず、ご近所でも。日頃、会っていなかった旧友に会うことも、とっても新鮮に感じるかもしれない。
さて、皆さんも一歩踏み出して、出かけてみませんか?

平成25年3月吉日
悟空の里主人 金森 悟

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●2012年11月 鍛えたからだ
●2012年10月 生き様
●2012年09月 時手紙(ときてがみ)