2020年01月 咀嚼と食事

 皆様、新しい年どのように迎えられたでしょうか?
初詣は、明治神宮に行きました。鎮座100年を迎えたとのこと。

 人生100年といわれる時代になり、100年を刻むことの大変さは測りしえないのではないでしょうか?

 長く生きても、寝たきりであったり、意識がなかったり、色々な状況でいる方も多い。本人にしてみれば、何もできない状態で長生きしても意味がない。という人も多い。しかし、家族からすれば、一日でも長く生きてもらいたいという気持ちがある。一方で、介護を継続する大変さが重くのしかかることも現実である。 

  「健康寿命」という言葉が現れた。簡単には、「心身ともに自立し健康的に生活ができる期間」という定義がある。厚生労働省の統計によると、男性72.14歳(平均寿命:80.98歳)、女性74.79歳(平均寿命:87.14歳)。「健康寿命」と平均寿命には、それぞれ10歳前後の差がある。介護福祉施設への平均入所期間は「4年」という統計がある。差し引くと、5から10年余りを自宅で過ごしていることになるのだろうか?

 先日、歯科医医師の話を聞き機会があった。一般的に「8020運動」(80歳になっても20本以上自分の歯を保とう。という運動)は、有名であるが、「咀嚼」(噛む)の重要性が、特に重要視されているとの話を聞いた。

時代による食事の咀嚼回数と食事時間の統計がある。

  1. 弥生時代(約4,000回/51分)、
  2. 鎌倉時代(約2,700回/29分)、
  3. 江戸時代初期(約1,500回/22分)、
  4. 戦後(620回/11分)

なんと戦後と弥生時代を比較すると6分の一に減少している。この統計は、当時の食事を再現し、食べる際に必要な咀嚼回数と時間を計算したものという。簡単に言えば、ハンバーグ、スパゲッティなどの柔らかい食事が増え、咀嚼する回数が、激減してきているという点である。固いものを噛むことで、咀嚼回数が増え、顎の骨格、筋肉が発達していた。これがどんどん退化したことになる。顎が細くなり、歯並びが悪くなるのは当然の結果といえる。またよく噛むことで「唾液」が分泌されることはご承知の通りである。この唾液が、口の中の粘膜全体を覆って保湿、保護。殺菌作用をし、虫歯や歯周病などを抑える効果があると。健康な成人では、一日1~1.5リットルの唾液を分泌しているという。しかし、加齢、ストレス、薬の投与などにより減少する。さらに、夜になると減少し口内細菌が増殖する傾向に。夜寝る前と朝起きてのすぐのケアは重要といわれるゆえんである。

 さて、時代の違いで噛むことに差が出る根本は、食事である。食事は、食べやすいように柔らかいなものが主流になってきている。玄米より白米、パンも「モッチリふわふわ!」が重宝される(CM効果?)。子供のころから、「食べやすく!」ということで、柔らかなもの、食べやすく切ったものを与えている傾向にあるという。先日、小さな子の前で、リンゴの丸かじりをした。小さな子にも勧めたが、「???」。なんと、丸かじりした経験がない。とのこと。お菓子メーカーが、ある実験をした。前歯で噛むときと、奥歯で噛むときを比較すると、前歯で噛んだほうが脳の血流が上がるという。勉強するときの食事&お菓子は、前歯で噛めるもがポイントであろう。この効果は、高齢者の脳の血流にもかかわるに違いない。介護施設では、誤嚥を避けるために流動食のような食事が中心になる。上記の「咀嚼」をすることなく飲み込むことになる。実母が入所中は、介護施設で、流動食になり、入れ歯の洗浄はしても、口腔内ケアをしっかりしてもらえなかった。因果関係は分からないが、痴呆の症状はどんどん進んだように感じた。

 年齢に関係なく、日ごろの食事は、前歯も使う機会も考え、よく噛めるメニューで、唾液を出すことで、新進富の健康な生活を送る努力をすることができるということになる。皆さん今日から実践してみませんか??

令和2年1月吉日
悟空の里主人 金森 悟

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