2022年07月 人間の本能なのか?

 安倍晋三元総理が銃弾に倒れ、旅立たれた。
どんな理由があろうとも、人を殺害することは許されることではない。犯人も身内を見送ったことがあるならばその気持ちはわかるはず。安倍さんご本人とは、持病で一線を引かれていた時期に、スポーツクラブのお風呂で何度かお目にかかる機会があり、生意気ながら、年齢も若く、再度、総理大臣をしていただきたい旨、お話したことを覚えている。実弟は、大学時代の同窓であり、同じゼミで過ごした。ご婦人とは、何度か会合で同席する機会もいただいた。

 今回の犯行については、動機、原因、背景を、マスコミがいろいろと調べて、あぶりだそうとしている。ただ何をしても、安倍さんは戻ることはない。そもそも、人を攻撃する、殺害する。それは、人間の持つ本能なのか?と疑問がわいた。ネットで調べてみると、いくつかの見解があるようだ。

 そのひとつ、オーストリアの動物行動学者ローレンツ氏(ノーベル生理学・医学賞受賞)曰く「肉食動物は、攻撃本能が備わっていなければ捕食ができず、生きていけない。捕食される側にしても、捕食されないように反撃しなければいけない。そこにも攻撃本能が必要である。動物には、必要悪として攻撃本能が備わっており、人間も例外ではないという。」そして、「問題は、攻撃欲求の制御の仕方である。」と。さらに、「人間が最も進化の遅れた動物である。」とコメントする。例えば、ライオンやチンパンジーのオス同士が、縄張り争い、異性の取り合いで争う際は、決着がつき、負けたほうは引き下がり、勝ったほうも必要以上に相手を傷つけない。ところが人間は、衝動に任せて、相手が死ぬまで殴りつけ、自分の気が済むまで攻撃の手を緩めない行動がみられる。欲求不満が高まり怒りやイライラの情動が起こり、それを発散して解消し、落ち着いた状態を取り戻そうとする際、手っ取り早いのが、攻撃行動である。学校・職場でみられるいじめ行動は、同様に説明できるという。子供の成長段階における心の制御能力は、未熟である。職場では、大人になり制御能力は成熟していても、これを超越する強いストレスにより制御不能になってしまうという。

 子供の遊びとして、心を掴んでいるものは、昔は、男の子であれば、駒回し、めんこ、将棋、チャンバラごっこなどは、男子は強く賢く、他より優位に立つことを目標にする勝負事であった。剣道、柔道なども、「道」とはいうが、戦う術である。格闘技含め、スポーツと称するようになって、男女差はなくなり、種目も増えてきた。昔のインベーダーゲームは、対宇宙人。その後は、ヒーローが悪役をやっつけるというウルトラマン、仮面ライダー、鬼滅の刃、ポケモンも戦う内容になっている。他人と競い合い、自分を成長、向上させることは、成長過程で必要である。政治・ビジネスの世界にも必ず競争が存在する。しかしながらそれがフェアかどうかは、また別の議論なのかもしれない。相手を蹴落とすことにより、自分が優位に立とうとする行為は、世界中で起こっている。今起きている戦争、アジアにおける外交はまさにその例なのかもしれない。フェアに、平和裏に物事を進めることは、難しいことなのだろうか?きれい事だけでは、進まないことは重々承知しているつもりである。世の中、多くのストレスを抱える人は多い。しかし、自分が生きていくために、人を蹴落とす、命を奪う行為は、絶対に許されないことを強く認識される事を望みたい。

 改めて、安倍晋三さんのお旅立ち、心よりご冥福をお祈り申し上げるとともに、明恵さん、岸信夫君他遺族の皆さま方には、どうぞご自愛いただき、安倍さんの遺志を継いでお体大切にお過ごしください。 合掌

令和4年7月吉日
悟空の里 主人