2022年03月 刻まれた歴史に触れること

 約2年に渡るCOVID-19禍が続いている。ウイルスは変異を繰り返しながらオミクロン株に。その治療薬の開発・三回目のワクチン接種が進んでいる。当初のような重症化することも減少しているとか。蔓延防止期間も3都府県を残し、近く解除予定。海外では、行動制限も解除される方向に向かっているようだ。そんな中、ロシアのウクライナ侵攻が始まり3週間ほどになる。色々な情報が飛び交う中、この出来事は、どこに本質的な問題があり、どのような解決の方向に向かっていくのであろうか?ウクライナは、大相撲の元横綱大鵬の父親の出身地でもある。約6年前、友人の紹介でウクライナ出身のデザイナーとのご縁ができた。彼女は、チェルノブイリの原発事故(1986年)の経験を活かし、福島の原発事故(2011年)の被災地支援活動に力を貸してくれている。そんなご縁で、当時のウクライナ駐日大使にもお目にかかった。彼女はフランス在住であるが、母国へ戻った元大使らのご無事、一日も早く平和が戻ることを祈っている。

 さて、先日、大阪万博公園内にある国立民俗博物館へ出かけた。大阪万博は、1970年に開催され、両親が、当時小学校6年生の私を連れていってくれた。アメリカ館の「月の石」展示が注目を浴びていた。今回は、小春日和の週末でもあり、COVID-19禍でも多くの人出があった。万博のシンボルでもあった岡本太郎作の「太陽の塔」。汚れもかなり進み、建造物としても、かなり老朽化。耐震対策もどうなっているのか?

 古い建造物は、どのように保存&管理されてきているのであろうか?ヨーロッパの100年以上の建造物は、大切に保存されているが、地震大国である日本では、難しいものなのだろうか?前職で、スイスの顧客の築80年以上にもなるご自宅に招いてもらったことがある。昔からの調度品はそのままであった。しかしこれは行政管理下にあり、勝手に移動させること処分もできないなど制限があるという。歴史的なものを使いながら守るというルールがあった。日本における歴史的建造物はどんなものがあるであろうか?東京タワーは、私と同じ昭和33年生まれで63年。より古く現存しているのはお城、神社仏閣であろうか?

 大阪からの帰路は、寄り道をして、橿原神宮、神武天皇陵に立ち寄り、伊勢神宮へ向かった。まずは外宮をスタートに、月夜見宮、倭姫宮、月讀宮、内宮にお詣りした。2013年、20年に一度の伊勢神宮・式年遷宮の祭事のひとつ「お白石持」行事に、居木神社(東京都大崎)宮司の計らいで参加させていただいた。この祭事は、「特別神領民」と指定された人が、新しい正殿の敷地に宮川の白い石を敷き詰める行事で、参加者ひとりひとりは、白石をひとつずつ持ち、新しい正殿に入り、敷地に置いてくる。約9年前に、足を踏み入れさせていただいた内宮の正殿は、普段では、一般参拝では入れない場所。当時を思い出しながら、手を合わせてきた。

 ここ数年、神社マイスターのような知人のアドバイスで、神社巡りをしている。現存する木造建築のすばらしさ、美しさを保ちながら、歴史を刻んでいる建造物が興味深い。世界最古の木造建築は、法隆寺(607年建設、670年全焼。その後再建)だそうだ。756年前後の建造とされる「正倉院」には、特別な計らいで、建物の真下まで入れていただいたことがある。阪神大震災の時に若干のズレが残っているものの、それ以外は、強固に維持されている。唯一、ハクビシンなどの獣害が懸念されるとのこと。日本の風土に合わせて建てられた建造物に今でもそれに触れることのできる環境は、大事にしていきたいと思った。皆さんも、改めて、ご近所の神社仏閣を訪れてみませんか?100年以上、1000年近い歴史に触れることができますよ。

令和4年3月吉日
悟空の里主人 金森 悟