2008年07月 思いやりの心

 仕事上のトラブルがあった。始めは、どちらが悪いともいえないところからスタートするのだが、事務的処理をした部署からの一通の手紙が、悪者扱いともとれる言葉遣いとなって、お客様が気分を害される引き金となってしまった。私にとって、長年のお客様の信頼を一瞬のうちに損ねてしまいかねない出来事であった。幸い、大変に紳士的な方で、お付き合いが切れることは無く、ご家族共々、その後も、ご連絡を取らせていただいている。

 同じようなことが、大学の大先輩からの相談の電話で、関連会社で起きていることが分かった。大先輩は、事故の被害者。ところが、会社側が、誠意を見せずに、決着を早く付けようとしたためか、失礼な表現のレターが送られて、お相手を完全に怒らせてしまった。

いつも「相手の気持ちになって物事を考えろ!」といわれてきた。自分の子供たちにも小さい頃から言い聞かせてきた。ところが、あまり相手のことばかり考えすぎて、個性が出せなくなったり、相手のことばかりが気になって、自分から動けなくなったり・・・と、苦慮したことも記憶に新しい。「自分がやられて嫌なことは、お友達には、絶対してはだめだよ!」と表現を変えて教えたことも。

 スポーツの世界にある「フェアプレー」。その意味は、「ルール及びマナーを守り、紳士的にプレーすること。」競技の上では、敵と味方であるが、フェアプレーの精神にのっとり、勝負だけにこだわるのではなく、爽やかなプレーで競い合う。そんな気持ち、願いがこめられているのであろう。

 先日「ラストゲーム」(最後の早慶戦:http://www.lastgame-movie.jp/)という、来る8月23日(土)全国ロードショーの映画の試写会へ出かけた。時代は、1943年。学徒動員を前に「二度と帰れないかもしれない若者たちに生きた証を残してやりたい」との思いから、慶應義塾大学の小泉信三塾長が、早稲田大学野球部に、出兵前の「早慶戦」開催を呼びかけ、実現するストーリーである。あちこちで涙を流す場面が出てくるが、私の涙が止まらなくなったのは、早稲田の勝利で終了した試合の直後、早稲田のベンチから慶應の応援歌「若き血」が歌われた瞬間であった。実現までの思いはさまざまであるが、それらを乗り越えて、真剣勝負の後、相手校の戦い&プレーを讃える気持ち。どんな相手でも、どんなに対立しあっていても、「人は、最後まで相手を思う気持ち、またその瞬間を忘れてはいけない。」、「相手を思いやる心を大切にしなければいけない。」という場面に心を打たれたのだと思う。

 仕事の上でも、自分の成績向上ばかり考えて、お客様の気持ちを忘れてしまう出来事が多い。許しがたいのは、相手の親切心に付け込んだ詐欺まがいの犯罪である。「自分さえよければいい!!」という考えは、競争社会のせいなのか?・・・それは、フェアプレーの精神があれば、真剣勝負とそれを離れた時との区別判断ができ、さらに気持ちの切り替えができれば、いろいろな事件も減らすことができるのではないだろうか?

 生きていく中で、いろいろなことで対峙することが多くあると思う。心の余裕もなかなか取れないかもしれないが、相手を思い、感じることができれば、結果は、勝負に関係なく、一生、心に残る思い出となるに違いない! 自己主張しがちな人間であるが、所詮一人では生きてゆけない。お互いの心が少しでも理解できるように、ステキな思い出を作りながら、人生を送ることを心がけてみませんか? みなさんも、ぜひ、一瞬の心の安らぎを持ってみましょう!! まずは、暑気払いのビールの乾杯から!!でしょうか!!

平成20年7月吉日

悟空の里 主人
金森 悟

 

●2008.6人生の分岐点と終点 ●2008.5最高の人生の見つけ方 ●2008.4出会いと再会

●2008.3語り継ぐ大切さ! ●2008.2出会いと再会 ●2008.1縁起